【2026年版】相続した土地を国に返せる?国庫帰属制度の条件・費用・デメリット

相続土地国庫帰属制度の条件・費用・デメリットを解説する宅建士もっさん 不動産知識・雑学

こんにちは!

福岡で宅地建物取引士として不動産実務に携わっている「もっさん」です。

相続した実家や土地について

「使う予定がない」

「売ろうとしても買い手が見つからない」

「固定資産税だけ払い続けるのはつらい…」

と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

最近は「不要な土地を国に返せる制度がある」「放置すると行政に叩き売られる」といった情報も見かけます。

ただし、この表現は少し誤解を招きます。

相続した土地が行政によって突然売却されるわけではありません。一方で、相続登記をせず、空き家や土地を放置し続けることには確かなリスクがあります。

この記事では、相続土地国庫帰属制度の条件・費用・デメリットと、売れない実家や土地を手放す方法を宅建士の実務目線で分かりやすく解説します。

※制度の利用条件は土地ごとに異なります。最終的な判断は管轄の法務局・司法書士・弁護士などへご相談ください。

結論|国庫帰属制度を使う前に売却できないか確認しよう

相続土地国庫帰属制度は、相続した不要な土地を国庫へ帰属させられる制度です。

ただし、どのような土地でも国が引き取ってくれるわけではありません。

建物が残っている土地や、境界に争いがある土地などは申請できない場合があります。審査手数料と負担金も必要です。

もっさんがおすすめする確認順は次のとおりです。

  1. 土地と建物の名義を確認する
  2. 相続登記を進める
  3. 不動産会社に売却できるか確認する
  4. 隣地所有者への売却も検討する
  5. 建物の解体費や測量費を確認する
  6. 売却が難しければ国庫帰属制度を検討する
  7. 管轄の法務局へ事前相談する

「田舎だから絶対に売れない」と自分だけで決めてしまうのは、少しもったいないです!

低価格でも隣地所有者や近隣住民が購入を希望することがあります。まずは売却の可能性と費用を確認してから、国庫帰属制度と比較しましょう。

行政が相続土地を勝手に叩き売るわけではない

所有者が分からない土地などについては、裁判所が管理人を選任する「所有者不明土地管理制度」があります。

選任された管理人は、裁判所の許可など必要な手続きを経て土地を売却できる場合があります。

しかし、これは自治体が相続人の土地を自由に安く売却する制度ではありません。

「行政が勝手に叩き売る」という説明は正確ではないため、必要以上に怖がらなくて大丈夫です。

ただし、名義を何世代も放置すると相続人が増え、売却や遺産分割が難しくなる可能性があります。

もっさんも不動産実務の中で「名義が祖父母やさらに前の世代のまま」というケースを見かけます。

関係者が増えるほど戸籍の確認や話し合いに時間がかかります。早めに名義を確認しておくことが大切です。

相続土地国庫帰属制度とは?

相続土地国庫帰属制度は、相続や一定の遺贈によって土地を取得した人が、法務大臣の承認を受けて土地を国庫へ帰属させる制度です。

2023年4月27日から始まりました。

制度開始前に相続した土地でも申請できます。

ただし、土地を国へ無条件で寄付する制度ではありません。

法務局による書面審査や現地調査があり、承認後には国が土地を管理するための負担金を納めます。

申請できる人

原則として、相続または相続人への遺贈によって土地の所有権を取得した人が申請できます。

土地を売買によって取得した人は、この制度を利用できません。

複数人で土地を共有している場合は、共有者全員で申請する必要があります。

共有者の中に売買で持分を取得した人がいても、相続などで持分を取得した共有者と共同で申請できる場合があります。

判断が難しい場合は、土地を管轄する法務局へ相談してください。

申請できない土地

次のような土地は、申請段階で却下される可能性があります。

  • 建物が建っている土地
  • 抵当権などの担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 通路や墓地など他人による使用が予定されている土地
  • 特定有害物質によって汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地
  • 所有権について争いがある土地

特に注意したいのが、建物付きの土地です。

空き家が残ったままでは原則として申請できません。建物を解体する場合は、数十万円から数百万円の費用がかかる可能性があります。

「国に引き取ってもらえば無料で解決!」とはいかないのが現実です(泣)

審査で不承認になる可能性がある土地

申請を受け付けてもらえても、通常の管理に過大な費用や労力がかかる土地は不承認になる可能性があります。

代表的な例はこちらです。

  • 管理に大きな負担がかかる崖がある
  • 土地の上に処分が必要な工作物や樹木などがある
  • 地中に除去が必要な物が埋まっている
  • 隣地所有者などとの争いを解決しなければ管理できない
  • その他、通常の管理に過大な費用や労力がかかる

放置された物置・廃棄物・大量の樹木などがある場合も、事前に対応が必要になる可能性があります。

土地をきれいにすれば必ず承認されるわけではありません。費用をかける前に法務局へ相談しましょう。

国庫帰属に必要な費用

相続土地国庫帰属制度では、主に次の費用が必要です。

審査手数料

審査手数料は、土地一筆につき1万4,000円です。

審査で不承認になった場合や申請を取り下げた場合でも、原則として返還されません。

土地が複数の筆に分かれていると、その筆数分の審査手数料が必要です。

負担金

審査で承認された場合は、国による10年分の標準的な土地管理費に相当する負担金を納めます。

負担金は原則20万円ですが、市街化区域などの宅地・農地・森林では、面積などに応じて20万円を超えることがあります。

このほかにも、次の費用が発生する可能性があります。

  • 建物の解体費
  • 境界確定や測量の費用
  • 不用品や工作物の撤去費
  • 相続登記の費用
  • 司法書士などへの依頼費用

国庫帰属だけの金額ではなく、土地を申請できる状態にするまでの総額で比較することが大切です。

相続土地国庫帰属制度のデメリット

建物付きの土地には使えない

実家が残っている土地は、そのままでは申請できません。

解体しても承認される保証はないため、先に解体するかどうかは慎重に判断してください。

費用をかけても承認されない可能性がある

審査手数料・測量費・撤去費などを負担しても、不承認になる可能性があります。

先に法務局へ相談し、どのような問題があるか整理してから動きましょう。

すぐには手放せない

書類確認や現地調査があるため、申請してすぐに国へ引き渡せる制度ではありません。

固定資産税や草刈りなどの管理負担も考えて、余裕を持って進める必要があります。

相続放棄とは別の制度

相続放棄は、不要な土地だけを選んで放棄する手続きではありません。

原則として預貯金などを含む相続財産全体について判断します。期限もあるため、相続が発生した直後は早めに専門家へ相談してください。

売れない実家や土地を手放す方法

国庫帰属制度だけが選択肢ではありません。

不動産会社へ査定を依頼する

最初に通常の売却ができないか確認します。

価格が安くても、住宅用地・資材置場・駐車場・隣地との一体利用などの需要があるかもしれません。

査定額だけではなく、売却に必要な測量・解体・残置物撤去などの条件も確認しましょう。

隣地所有者へ相談する

一般市場では売りにくい小さな土地や接道条件の悪い土地でも、隣地所有者には価値がある場合があります。

ただし、突然訪問して売却を迫るとトラブルになりかねません。不動産会社などを通して相談する方法もあります。

空き家バンクを利用する

自治体によっては、空き家や土地を売りたい人と利用したい人をつなぐ空き家バンクを設置しています。

対象地域・登録条件・仲介方法は自治体ごとに異なります。

建物を残して売るか解体して売るか比較する

古い実家でも、購入者がリフォームを希望する場合があります。

先に解体すると固定資産税の住宅用地特例が使えなくなる可能性もあります。

解体費・売却価格・税負担を比較してから決めましょう。

国庫帰属制度を利用する

売却・隣地への譲渡・空き家バンクなどを検討しても処分が難しい場合に、国庫帰属制度を検討します。

「最後の選択肢の一つ」として考えると分かりやすいでしょう。

空き家を放置すると固定資産税が必ず6倍になる?

「空き家を放置すると固定資産税が6倍になる」とよく言われます。

正確には、市区町村から管理不全空家や特定空家に対する勧告を受けると、敷地に適用されていた住宅用地特例が外れる可能性があります。

200平方メートル以下の小規模住宅用地では、固定資産税の課税標準を6分の1とする特例があります。

この特例が外れることから「最大6倍」と表現されますが、実際の税額が必ずちょうど6倍になるわけではありません。

建物の課税や都市計画税なども関係するため、詳しい金額は土地のある市区町村へ確認しましょう。

2024年から相続登記が義務化

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

不動産を相続したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。

2024年4月1日より前に発生した相続も対象です。過去の相続で名義変更が終わっていない場合は、原則として2027年3月31日までの対応が必要になります。

正当な理由なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。

関連する手続きはこちらの記事でも解説しています。

実家を放置すると危険?住所変更登記の義務化と注意点

もっさんの本音|売れないと思い込む前に確認してほしい

不動産の仕事をしていると、所有者自身が「こんな土地は誰も買わない」と諦めていることがあります。

でも、土地の価値は広さや場所だけでは決まりません。

隣地と一緒に使えば価値が出ることもあります。価格を調整すれば購入希望者が見つかる可能性もあります。

一方で、売却価格より測量費や解体費のほうが高くなるケースもあります。

だからこそ大切なのは、勢いで解体したり放置したりせず、選択肢ごとの手取り額と必要費用を比べることです!

土地に祠などがある場合は、撤去前に所有者や経緯の確認も必要です。

土地やビル屋上の祠は撤去できる?売却前に確認したい所有者と手順

よくある質問

相続した土地だけを相続放棄できますか?

原則として、不要な土地だけを選んで相続放棄することはできません。

預貯金・不動産・負債などを含めて判断する必要があります。期限もあるため、家庭裁判所や専門家へ早めに相談してください。

建物を解体すれば必ず国が引き取ってくれますか?

必ず承認されるわけではありません。

境界・担保権・崖・埋設物・隣地との争いなど、ほかの条件も審査されます。解体前に法務局へ相談することをおすすめします。

国庫帰属と売却はどちらが得ですか?

売却できるなら、国庫帰属より費用負担を抑えられる可能性があります。

ただし、測量費・解体費・仲介費用などを含めて比較する必要があります。売却可能性を確認してから国庫帰属制度を検討しましょう。

まとめ|売却と国庫帰属に必要な総費用を比較しよう

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を手放すための有効な選択肢です。

ただし、建物がある土地などは申請できず、審査手数料や負担金も必要です。

まずは次の順番で確認しましょう。

  1. 名義と相続人を確認する
  2. 相続登記を進める
  3. 売却できるか査定する
  4. 測量費や解体費を確認する
  5. 隣地への売却や空き家バンクも検討する
  6. 法務局へ相談する
  7. 国庫帰属制度を申請するか判断する

相続した不動産は、時間がたつほど話し合う相続人が増えることがあります。

「そのうち考えよう」と放置せず、まずは名義と現在の状態を確認するところから始めてみてください。

分からないことが多くても大丈夫です。一つずつ整理していきましょう!

参考にした公的情報

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